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2005年 08月 15日
さて、この記事の最後に書いた、「こんなことずっとやっていたら、道を誤るぞ~」の話です。
今回、広告品を作るに当たって、モデルを使いました、といっても、背景にチョロッと出るぐらいの小さい扱いですので、名前も出すことの無い無名(そしてコストの安い)モデルさんです。 と言いながらも、きちんと商品のイメージに合った写真を撮りたい訳ですから、 1.候補者のリストアップ(と言ってもモデル事務所に丸投げ) 2.オーディション(といっても普通の会議室が会場) 3.スタイリストによる洋服の選定 4.撮影 というきちんとした作業手順を踏んでの作業です。 当初、僕は、この作業をとてもエンジニアリング的な作業と捉えていたのですが、フタを開けてみてビックリ、実際には クライアント(そう僕のことです) ↓ 広告代理店 ↓ モデル事務所 ↓ モデル本人 と言う、お金の流れを素直に投影したヒエラルキーの基で作業が進捗します。 自分が、ヒエラルキーのトップ、動くものは「金」、そして、ヒエラルキーの最下層は「きれいな女の子」ということで、その後の展開は言わずとも分かるでしょうが、とにかく、こんな事をずっとやっていたら、というか、やれる立場にいたら、男として間違いなく道を誤りますね、と感じました。 ただ、この関係は、モデルさん自身に強いメッセージ訴求力を持った時、まあ単刀直入に言うと有名人を使う時は、この矢印の向きが反対になるそうです。そうなった時は、今度はモデル本人が簡単に「道を誤る」状況(実際に有名人には勘違い野郎が多いらしい)なわけですから、いずれにせよ、不健康な世界ですよね。 ============== まあ、そんな感じで、若干ヨコシマナ気持ちを楽しみながら、モデルの選定までは楽しく進んだのですが、その後の作業にはかなり苦労(まあそういう苦労は割と好きですが)しました。 特に感じたのは、スタイリストやモデル事務所の人間といった、言わばモデル本人を「料理する」人間達の質の低さですね。 例えば、日本において、「想定しているのは、20代後半、女性、知的なOL」ってイメージさえを伝えれば、洋服から、化粧、髪型まで、スタイリストがビシッと作り込んでくれます。 なのですが、こちらでは、そんな「あうん」の呼吸が伝わる訳もなく、 「知的OLは、ピンクのヒラヒラしたセーターは着ないだろ!!」 という文句から始まり、 上海で発売されている女性誌(oggiやviviといった日本の女性誌の中国版です) を買い漁って、 そこからイメージに近い記事(山田優さんの「1週間着回し通勤ファッション!!」でした) をスクラップしてスタイリストに渡して、 それでもダメで、結局最後は、広告代理店のマネージャーさんと、閉店間近のデパート (日系の「そごう」です)に飛び込んで自分たちで洋服(グレーのパンツスーツでした)を選ぶ、 というドタバタをへて、やっと撮影までたどり着きました。 まあ、この一件だけで、中国全体のコンテンツの質を語るのはいけないのかもしれませんが、こういう事を、「割と頻繁に経験している」広告代理店のマネージャーさんをして、「まあ、上海で仕事をする限り、これが基準値ですよ」という発言を踏まえれば、この辺が、日本と中国の「差」の代表例でしょう。 プロダクトデザインの世界に「神はディテールに宿る」という表現がありますが、日本人はこの事に病的なまでにこだわり、それが現在の(一応の)成功を収めている大きな要因と言っても良いと思います。この差を埋められるか否かが、今後中国が本当の経済大国としてテクオフできるか否かの勝負所では無いでしょうか? しかし最後に余談ですが、これを機会に改めて思いました、日本の雑誌の質は極めて高いです、ホントに。メディアとして影響力を持つ理由がつくづく分かりました。ということで、日本に帰ったら、雑誌はちょくちょく買って、きちんとスクラップしておこうと、つくづく感じた今回の仕事でした。 おしまい。
by ddskk
| 2005-08-15 14:57
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